2014年度 世田谷市民大学 連続講義


「生まれるアジア、老いるアジア」

第3回 青柳先生 9月29日 6/6
「命どう宝」の今昔―琉球生命観とその変貌

島人の生命と外圧

さて、時間も押し迫って参りましたが、地域共同体に根差した沖縄の人々のこうした生命感溢れるリズミカルな生活を崩し脅かす外圧について許す限り言及してみたいと思います。
 沖縄では誰もがよく知っているとされる流行歌(島唄)の中に、次の二つのようなものがあげられます:
人気バンドBEGINが奏でる二つ目の例は、沖縄の本土復帰30周年のイメージソングとしてリリースされ、当時の沖縄ブームにも乗って全国的なヒットとなりました。ここにいらっしゃる皆様にもお馴染みの曲ではないかと思いますが、これには沖縄の伝統的な価値観やライフスタイルが次第に失われていくことへの嘆きと、それでも尚シマンチュとしての誇りは変わることなく続くのだというアイデンティティーが表明されています。一方、オキナワンロックを代表する佐渡山豊が作詞し、島唄民謡の大御所である嘉手苅林昌によっても唄われた先の一節は、中・日・米間の政治的なやり取りによって琉球人の母国が振り回されてきたことを憂える行ともいえましょう。こうして沖縄のポピュラー音楽に耳を傾けてみても、外圧下に苦しめられてきた琉球民族の姿がよく観てとれます。
では、沖縄がこれまで受けてきた主な外圧をリストアップしてみますと、次のようになります:
このリスト中現地でよく話題になるのが、先にも述べた明治初期の廃藩置県に伴う琉球処分による国家の消滅(略奪)、沖縄戦の悲惨な記憶、米軍統治下の苦悩と混乱、そして日米安保体制下で「本土復帰」から今日に至る基地負担や乱開発といった「沖縄に対する構造的な差別」の問題です。琉球人の経済学者である松島泰勝氏は、近年出版された著書『琉球独立への道』(法律文化社, 2012)においてこれらの歴史的事象を踏まえ、琉球が日米による植民地であり続けてきた(今もあり続けている)ことを明示されております。
私自身がこれまで足掛け5年に渡って120名を超える地元のインフォーマントを対象に実施してきた聴き取り調査からは、自分たちの生活に密着したより具体的な「外圧の影響」が明らかになってきます。これらをリストアップしてみると、次のようになります:
  • 基地の存続がもたらす基地依存生活(就職、助成金、そして地元民の意見対立など)
  • 外資系産業の発達による生活世界の営利化や金権化
  • 公共事業や観光など、乱開発による生活環境の破壊
  • 観光ブームによる、伝統的な知的財産の商売道具化
  • 大手スーパーやコンビニチェーンの進出による街の拡散化
  • ファストフードの流行による食生活の悪化、肥満化、あるいは寿命の短縮化
本日は残念ながら、これらの項目について詳しく述べる時間がもうないので、次回のレクチャーで「ニライカナイ」という概念と関連づけて解説を試みたいと思います。要はこうした一連の外圧によって、先に紹介した「命どぅ宝」のプリンシプルとこれに根差したライフサイクルがともすれば脅かされ、文化の喪失や共同体の崩壊にもつながりかねないという点です。そこで、これらを裏付ける基地と公共事業と観光のいわゆる「沖縄3K開発」について、ご自分なりに調べ考えておくことを本日のみなさんへの「宿題」にさせていただきたいと思います。先の『琉球独立への道』も、できればぜひ購読してみてください。