2014年度 世田谷市民大学 連続講義


「生まれるアジア、老いるアジア」

第7回 松岡先生 11月10日 1/5
老いと「輪廻・転生」〜現代インドの一側面
<レジュメ>
1.インドの老人問題
 ①高齢者(60歳以上)の状況
  ○これまではあまり問題として取り上げられてこなかった
   ・平均寿命が短く、高齢になるまで生きている人が少なかった
   ・高齢者の生活保障は家庭やコミュニティが責任を負うものだった
  ○現在の特徴
   ・高齢者の多くが農村部に住む
    〜人口比:農村部68.8%/都市部31.2%(2011)
   ・女性の高齢者の方が多い〜農村部:男性7.4%/女性8.1%(2006) 
                都市部:男性6.2%/女性7.2%(2006) 
   ・80歳以上の高齢者の増加(平均寿命:66.21歳/2009年/140位)
   ・貧困層の高齢者が多い
  <インドの人口構成>〜下のサイトを参照
   http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/8250.html
   <日本との比較>〜下のサイト「BRICs辞典」を参照
   http://www.brics-jp.com/india/jinkou_zouka.html
 ②高齢者の生活保障
  ○高齢者の経済依存状況(60歳以上)
         (出典:太田仁志「インドの高齢者と社会保障システム」) 
   ※依存する相手は配偶者が10%強、子供が80%弱、孫その他が10%(平均)
  ○政府の取り組み
   担当は社会正義・エンパワメント省(Ministry of Social Justice and Empowerment)
    〜指定カースト&部族、障害者の問題も扱う
    1999年「全国高齢者政策」を発表
       「高齢者社会所得保障」委員会設置
  ○年金・退職準備基金
   ・公務員や大会社の社員等労働者全体の12%のみ
   ・公務員は加入最長33年、退職前賃金の50%支給、上限15,000ルピー
  ○老人ホーム
   ・無料(政府、民間)〜身よりのない人向け、60歳(女性55歳)以上等、終身型
   ・収入で費用派生(民間)〜病気の人向け、ターミナルケアなど様々に対応
    [参考文献]太田仁志「インドの高齢者と生活保障システム」宇佐見耕一
    『新興諸国における高齢者の生活保障システム』調査研究報告書、アジア経済研究所 2009年
     http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Download/Report/pdf/2008_114_05.pdf

2.ヒンドゥー教の死生観
 ①ヒンドゥー教
  ・B.C.6〜4世紀に、バラモン教が土着信仰を取り込む形で形成
  ・多神教で、ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァが三大神。
   ヴィシュヌ、シヴァ、ヴィシュヌの化身クリシュナやラーマ、シヴァの子象神ガネーシャらが人気。
  ・業(カルマ)、輪廻(サンサーラ)、解脱(モークシャ)等の考え方や、
   カースト制度がバックボーンとなっている。
  ・人口比における割合は80.5%(2001年国勢調査)
 ②ヒンドゥー教徒の理想の生涯〜人生の四大目的
  (1)ダルマ(法、行為の規範)〜正しい生き方を追究する
     ・種姓法〜四種姓(ヴァルナ)バラモン(僧侶)  ¬
          (それぞれに   クシャトリヤ(王侯)| 再生族
           課された法   ヴァイシャ(庶民) 」
           を守る)    シュードラ(隷属民)
     ・生活期法〜四住期(男性)  学生期〜禁欲して学問する
                    家住期〜結婚し、子をなす
                     林棲期〜義務を果たし引退
                    遍歴期〜社会を超越する
  (2)アルタ(実利)〜物質的・経済的利益を追求する
  (3)カーマ(愛欲)〜愛情・性愛を追究する
  (4)モークシャ(解脱)〜輪廻から解放され、解脱を得る
 ③ヒンドゥー教徒の女性の幸せ
   幸せな結婚→子(特に男児)を産む→夫が長命→未亡人で夫の元へ
   ・女性は敬われるべき存在〜妻は家に幸運をもたらす光明
   ・女性の自立性は認めない〜女性は父、夫、息子に従属するべし
 ④ヒンドゥー教の葬儀
   ・亡くなった当日に火葬するのが望ましい〜"穢れ"の概念
   ・遺体を洗浴して白檀膏を塗り、カファン(経帷子)を着せる
   ・男性親族が火葬場に運ぶ〜女性親族は家にとどまることが多い
   ・遺体を薪の上に、足は南、頭は北にして置く
   ・男性遺族が火を点ける
   ・13日後に僧侶の供養で遺灰を川か海(ガンジス川が理想)に流す
 ⑤輪廻・転生
   ・輪廻・転生をするため墓は作らない
   ・輪廻・転生は現世の信心とカルマ(業)によって定まる

[参考映像]
1.『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(Om Shanti Om/2007/インド/ヒンディー語)
  監督:ファラー・カーン/出演:シャー・ルク・カーン、ディーピカー・パードゥコーン
  大部屋俳優オーム・プラカーシュ・マキージャーが謀られて死亡、
  同時刻に同じ病院でスターの息子オーム・カプールが誕生する。
  両者は右手首に「オーム」字の痣を持つ。30歳になったオームに前世の記憶が甦り、
  亡きオームの復讐を遂げる。

2.『マッキー』(Makkhi/2012/インド/ヒンディー語版・元はテルグ語)
  監督:S.S.ラージャマウリ/出演:スディープ、サマンサ・ルス・プラブ、ナーニ
  青年ジャニは恋人ビンドゥに横恋慕する金持ち男スディープに殺され、ハエに生まれ変わる。
  ビンドゥの助けを借りて、ハエのジャニはスディープに復讐する。

[参考文献]
 橋本泰元・宮本久義・山下博司著『ヒンドゥー教の事典』東京堂出版、2005.