2014年度 世田谷市民大学 連続講義


「生まれるアジア、老いるアジア」

第7回 松岡先生 11月10日 4/5
老いと「輪廻・転生」〜現代インドの一側面
さらに、若年層というか子供層が多いピラミッドになっていますね。これもネットにあったのですが、インドの人口分布を日本と比べてみると、もうその違いは歴然としています。日本は高齢者がすごく多くて、50歳以上がかなりの割合を占めます。インドは高齢者層が少しずつ増えていますが、まだそれでも若年層が高齢者層を支える形ができています。
そういう高齢者の生活保障なんですが、60歳以上の人の経済依存状況という表がネットにあったので、それをわかりやすくレジュメにまとめてみました。これを見ると、60歳以上ですと、まだ人に依存しないで生活をしているという人が、特に男性では半分ぐらいいるんですね。。女性の場合はぐっとパーセンテージが下がります。60歳以上でも、まだ農業をしているとか、商売をしている、あるいは商店の実権はまだ自分が握っているとか、そういう人が結構いるわけです。女性の場合はこれがぐっと少なくなりまして、依存している先は配偶者が10%強、子供が80%、その他が10%ぐらいになっています。
子供たちですが、必ずしも同居しているとは限りません。農村では同居が結構ありますが、農村に老夫婦がいて、息子たちの世代は都会に出て働いていることも多いです。出稼ぎに行っている場合もありますが、息子たちは成人した段階で都会に出てしまって、会社勤めなり、商売をしたりして働くというケースがよく見られます。
国内の都会だけではなくて、実は海外に行っている場合も多いんです。都会から農村に送金をする、あるいは海外、例えばアメリカでIT関係の技術者として働いていて、海外から送金をしてくる。そういう人も結構います。海外でみんな働いては、せっせとインドにいる両親や親族に送金して、それが高齢者の生活を支えているケースが結構あります。

こういう高齢者のうち、生活できている人たちは問題ないんですが、生活できない貧困層の高齢者をどうするかというのが今だんだん大きな問題になってきています。政府の取り組みとしては、担当省庁は社会正義・エンパワメント省(Ministry of Social Justice and Empowerment)なんですが、ここは高齢者問題だけを扱っている省ではありません。レジュメにあるように、指定カーストや指定部族、つまり差別されているカーストや部族の問題も担当しています。そういう人たちの経済水準を引き上げなくちゃいけない。実はここらあたりにこの社会正義・エンパワメント省は一番力を注いでいて、いろいろな政策を打ち出したり、問題解決に当たったりしています。ほかには障害者の問題も扱いますし、それらに比べると、これまであまり高齢者数が多くなかったこともあって、高齢者対策はちょっと後手に回っています。やっと1990年に「全国高齢者政策」が発表され、これから来たる高齢者社会に向けていろんなことを打ち出していこうとしているところです。
そういう高齢者の対策として、日本だと一番に浮かぶのが年金なんですが、年金あるいは退職準備基金の制度も一応あります。公務員の場合は、以前は年金が恩給のような形、つまり自分たちは掛け金を出さなくても政府が出すという形で支給されていたんですが、2004年からは公務員自身も掛け金を納め、政府も掛け金を出して、両方から拠出される形になりました。
大会社では、社員のうち低賃金労働者は退職すると暮らしていけない場合があるため、給料が月6,500ルピー(約1万円)以下の社員は掛け金をして、それから会社側も同じように拠出して退職した場合の保障にしなさい、という風になっています。月6,500ルピー以上の給料をもらっている人は任意加入になっています。
公務員の場合は最長加入できるのが33年で、退職前の賃金の50%が支給されるという形なんですが、上限が1万5,000ルピー(約2万7,000円)で非常に少ないんですね。大都市ですと、1カ月とても暮らしていけません。自分の家があったとしても、ぎりぎり食べていけるかどうかという額です。というのが、インドの大都市は1991年以降すごい経済発展を遂げているんですが、それに伴って物価がどんどん上昇してきているんです。物価上昇に見合うだけの保障かというと、とてもじゃないけれどもこれは暮らしていけない。なので、こういう年金をもらいながらも息子たちからも援助を受けたりとか、何かアルバイトをしたりとか、そういうことをしている人も多いです。


(お寺参りをする人には老人の姿が目立つ。ムンバイの寺院にて)