2014年度 世田谷市民大学 連続講義


「生まれるアジア、老いるアジア」

第11回 土佐先生 12月08日 2/7
韓国は敬老社会か?
高齢化という面では、日本は世界のトップを走っている自覚があると思いますけれども、ところが、日本より実は上がいたわけです。
65歳以上を高齢人口といい、総人口の7%以上が高齢人口になると高齢化社会と呼びます。14%以上になると高齢社会、そして20%以上になると超高齢社会と呼びます。日本はもちろん、もうとっくに超高齢社会です。この高齢化社会から高齢社会へ、そして超高齢社会になるのにそれぞれ何年かかるかという数字があるのですけれども、ゆっくりしているのはフランスとかイギリスです。フランスの場合は、7%から14%になるのに115年、アメリカで71年かかっています。ところが日本は24年ですから、すごいペースで高齢社会になったのは間違いありません。しかし、韓国はもっと早くて19年しかかかっていません。14%から24%になるスピードは、日本が12年であるのに対し、韓国は7年です。このくらい変化のスピードが飛び抜けているのです。あと、香港やシンガポールも同じ傾向で、アジアの中でいち早く豊かになっていった社会というのは、例外なく高齢化のスピードも速いということです。
どうしてこういうことが起こるかというと、これは別にマジックでもなんでもなくて、ごく自然なプロセスです。要するに急速度で社会が成長すればするほど、まず乳幼児死亡率が減りますし、医療が整い健康状態が良くなって全体の平均寿命も伸びていくわけです。昔は子供をたくさん生む家庭が普通でしたので、その習慣はしばらくは変わらないわけで、発展途上の社会から成長軌道に乗る時期は急に人口が増えることになります。ところが、そのままずっと伸び続けるということはありえない。必ずそれが頭打ちになります。子供の教育費にお金がかかったり女性の社会進出が進んだりすれば、自然な帰結として出生率が必ず減っていきます。そうすれば人口構成上、老人の比率がだんだん増えていく。これは当然のプロセスなのです。
つまり、ある社会の発展のペースが速ければ速いほど、高齢化のペースも速いという、そういう当たり前のことなのです。資本主義とか近代的な制度というのは、ヨーロッパで生まれましたけれども、そういうものが社会に根付いていって発展に至るペースというのは、非常にゆっくりしたものでした。日本も他のアジア諸国も、それを国家が上から一挙に実現したわけです。ですから、一見、非常に社会発展のペースが速くて良いことのように見えますけども、そういう人口構成上のアンバランスを必ず生み出すわけです。韓国のように世界でも稀な急速度の発展は、世界でも稀な急速度の高齢化を引き起こしたということです。
産業化と近代化というプロセスには、個人の生活を豊かにするという正の側面もありますけれども、その中には必ず解決困難な矛盾が含まれています。そういう歴史的脈絡の中で、自分たちが背後に残してきた、あるいは破壊してきた伝統というものに対して、ある種の非常に両義的な見方や姿勢を生み出すのです。
韓国でも、伝統というものを大事にしないわけではありません。例えば、日本は正月とかお盆など、すべて新暦でやっていますが、韓国、中国は、新暦でなく旧暦でやっています。こういうのを見ると、日本より韓国、中国のほうが、伝統を大事にしているといえるかもしれません。しかし、それはさっきのタバコやお酒の例と同じように、非常に象徴的な位置にある習慣なのです。そうやって特別な機会や習慣だけを大事にするけれども、では全てにわたって旧暦で生活しているかというと、そんな人はほとんど誰もいません。一部だけ一種のシンボルとして儀礼的に大事にする。そうすると、いかにも伝統を大事にしていると見えるかもしれないですけれども、それは実はある種の目眩ましというか、煙幕効果の結果だということも否定できないと思います。
こうして韓国は、急速度で都市産業型社会になってきましたが、その副産物として急速な高齢化という現象がもたらされました。そういう中でシンボリックな意味を持つ儒教の位置は、どういうふうになっているかということです。変化のテンポが速すぎて、なかなか価値観の組み換えといいますか、再編成が追いついていっていない。それでいろいろな模索が見られる。こういうところが、韓国社会の置かれている一般的な状況じゃないかと思います。