2014年度 世田谷市民大学 連続講義


「生まれるアジア、老いるアジア」

第11回 土佐先生 12月08日 4/7
韓国は敬老社会か?
産業社会では働いている人が第一ですから、働く前の子供や学生は「産業予備軍」で、引退後の老人は「産業廃棄物」だという皮肉も日本では聞かれます。知恵袋や伝統の担い手としての老人の肯定的イメージは、周縁化していくしかありません。近代化や産業化という、とても大きな力が働いた時に、儒教的な伝統もまた、うまく対応できてないということです。
ある調査で幸せかどうかを高齢者に聞いた結果、「自分は不幸せだ」と思っている人の割合が、日本は7.1%、アメリカは6.8%であるのに対して、韓国は23%でした。国連の参加団体が行っているグローバル・エイジウォッチ・インデックス(高齢者観察指数)という国際調査でも同じような結果が見られます。健康ですとか、年金や経済的な条件とか、あるいは働くチャンス、教育のレベル、医療のサービスといった13の指標によって96カ国を対象に100点満点で位置づけたもので、去年ぐらいから一般に公表されるようになったようです。最新の2014年の結果ですけれども、1位はノルウェー、2位がスウェーデンで、さらにスイス、カナダ、ドイツという順で、8位がアメリカ、日本は9位です。昨年は日本は10位でした。
そうして見ていくと、アジアの中でも韓国はかなり下のほうです。タイが36位、フィリピンが44位、中国が48位で、韓国は50位です。去年は68位で、それに衝撃を受けた政府がかなり努力して、 50位まで上がってきたということのようです。経済的に韓国ほど発展していない国を含めたとしても、韓国の老人の置かれている境遇はかなり厳しいものがあります。国際的に見ても、客観的に見ても、それが現実です。
この結果は、韓国の現実をある程度知っている人にとっては、当たり前といえますが、一般的なイメージとは少しかけ離れているのかもしれません。そういう中で、どういったシニア文化というか、老人のライフスタイルが模索されているでしょうか。ここからの話が大切ですし、日本にとっても参考になる部分だと思うのです。日本より変化が速い分、厳しいしわ寄せが高齢者に行っている側面がありますが、それだけに日本では見えにくい出口も見つかるかもしれません。
老人の置かれた厳しい現実を示す具体的な事実をもう二点だけ付け加えておきます。まず、日本と比べて定年がかなり早いといえます。平均で58歳ですが、普通は55ぐらいで辞める人が多いようです。一つの背景として、 1997年に、IMF危機というものが起きました。アジア一帯に広がった金融危機で、韓国は破産の一歩手前まで行きました。そういう中で、企業が生き残るために、非常に大胆なリストラをずっと続けてきました。日本でリストラというと、普通50代以上の人が多いようですけれども、韓国は30代40代でもどんどん切られたり、あるいは50を過ぎると窓際に追いやられ、辞めろというプレッシャーがかなり強くなるようです。公務員や教職のように、定年が安定している職種を含めて平均で58ですから、普通の会社だとだいたい55くらいで辞めるケースが多いようです。高齢化の進む時代に、55歳だとまだまだ元気ですよね。しかも、年金もあまり整ってないので、非常に困ったことになります。
去年の4月に、雇用上の年齢差別禁止、および高齢者雇用促進法改正案というのが国会で出されまして、定年を60以上にするということが、これまでは企業の努力義務だったのを義務化することになりました。従業員300人以上の企業では2016年から、300人未満の事業体では2017年から義務化されることになり、定年の平均年齢もこれからは上がっていくと思いますが、これもまた韓国の厳しい現実を示す問題です。
そして年金です。国民年金制度が始まったのは1988年で、非常に新しい時期ですし、額も非常に少ないです。20年以上加入して払い続けると、月に約85万ウォンですからおよそ8万5,000円です。これでも少ない金額ですが、年金制度が始まってまだ新しいですし、20年以下という人が多いわけです。10年から20年しか払っていない人は、月に41万ウォンしかもらえない。日本円で4万円。これではとても暮らせません。すると、やはり家族に頼るしかないわけですが、現実にはなかなか難しいというわけです。