2014年度 世田谷市民大学 連続講義


「生まれるアジア、老いるアジア」

第11回 土佐先生 12月08日 6/7
韓国は敬老社会か?
韓国保健福祉部の2010年の調査によれば、火葬した後の遺骨をどこに埋めるかという時に、共同墓地のような奉安施設に埋めるのが32.7%ですが、実はいちばん大きい割合は、日本でも最近流行ってきている樹木葬のような自然葬です(39.9%)。そして散骨が27.3%。日本も明治期に火葬が一般化した時期がありますが、いったん大きく変わるとその後は安定化して、高温炉でわざわざ骨を焼き残して納骨する習慣を今でも維持しています。しかし、韓国や中国では今がその激動の時期なので、骨をわざわざ焼け残すこともなく灰にしてしまいます。文化の変化と維持というのは、そのような不思議なパターンを辿るようです。こういうふうに、もともとの伝統からかなり変わってきて、その変わり方のペースも非常に速いし、死に方に至るまで、実は日韓で共通化しつつあるわけです。今の韓国のように変化の激しい時点に注目するなら、文化がどんどん合理化され、あるいはフラット化されているという風に要約できると思います。
要するに、文化的民族的違いを超えて、どこの国の人間も、とりわけ都市に住む中産層というのは、同じような生活をするようになってきています。グローバル化された環境で生まれてくるシニア文化も、どんどん共通化しつつあります。
その例を最後に二つ、触れたいと思います。一つは柴田トヨさんの詩集です。90歳を超えて初めて詩を書いたというおばあさんで、去年102歳で亡くなったばかりです。この詩集が翻訳されて、韓国でも人気です。帯のキャッチコピーを見ると、「総合ベストセラー1位」、「105万部突破!」とあります。違う側面に焦点を当てると、かなり違うように見えますけども、もっと大きな目で見ると、やはり日本と韓国というのは、同じような方向に流れて行っているので、そういう中で培われる感性も似てくるわけです。日本のおばあさんの詩が、普通の韓国人の心にも響くわけです。そういう例は無数にあります。
もう一は、セシボンという韓国の音楽グループについてご紹介したいと思います。最近、日本で聴ける韓国の音楽というと、K-POPとくくられる若者グループのものが圧倒的に多いのですが、これは60代ばかりの年配者のグループです。
セシボンは、もともとソウルで最初に生まれた音楽鑑賞室の名前です。日本でいう音楽喫茶みたいなところで、そこで活躍していた人たちの中には、チョ・ヨンナムとかソン・チャンシクなど今でも有名なミュージシャンがいました。6-70年代に西洋ポップスやフォークソングを広めるメッカみたいなところでしたが、その後それぞれ個別に活動していた4人が集まって、数年前に久しぶりに再結成してテレビでやったところ大うけしたのです。最近は若い人にまでその人気が波及しているようです。60歳を過ぎたミュージシャンたちが、若者だけではなくて老人も文化的創造の主体になりうるということを示した例として、韓国で注目されています。その番組の様子を、少しお見せします。



日本にも似たようグループがありますよね。少し傾向は違いますけれども、ダークダックスだとかデューク・エイセスなど、ジャズや洋曲を日本に取り入れ大衆に近づけた役回りだとか、ちょっとおしゃれな大人の雰囲気がよく似ています。昔の洋楽を懐かしむという感性も、日韓に共通するものです。ですから、具体的な文化のあり方を見ていくと、違和感というよりは、けっこう共感できるようなものが想像する以上に多いのです。